― 一般社団法人先進医療教育・開発推進機構=DOFMETではどのような思いで『academia.study 』の提供・運用をされていますか?
DOFMET:“一刻も早く、より効果的で安全な医療を患者さんのもとへ”、DOFMETは、その実現を目指し、新規医療の開発研究を促進、支援する組織です。その重要な鍵となる要素のひとつが、新規医療研究の重要性を理解し、先端的な知識や技術、人道的倫理的なルールを習得した専門的人材の育成です。日本専門医機構や様々な機構・学会等が認定医や専門医制度を実施しておりますが、その取得にかかる費用は大半の場合、資格取得希望者が負担されています。学術集会などへの参加も医療機関によっては補助される場合もありますが、ほとんどの方は自費参加です。それでも、多くの医療従事者は自分のお金と時間を使って日々熱心に勉強をされています。そうした方々に対し、私たちが協力できることは何かと考えたとき『academia.study 』を通じた学習環境の提供ということになります。日常の医療業務等で多忙を極めるなか、いつでもどこでも学べる環境を可能な限り安価で提供することは、大きな意味を持つと考えております。
DOFMETは、医療従事者や専門医・認定医養成に、より効果的で負担の少ないe-ラーニングを行うことを目的に『プラットホームシステム=academia.study』を提供しています。導入にあたり初期費用は極めて安価で、いくつもの標準装備システム利用で短時間で運用開始できます。
― よりよい医療を提供したいという医療従事者の思いに応えるための『学習環境を提供すること』が『academia.study 』の理念なのですね。ところで、各学会ではeラーニングというものはスムーズに受け入れられたのでしょうか。
DOFMET:各学会ではeラーニングは必要だという認識はありましたが、ひとつはコストと労力、そして、学術集会やセミナーに比べた場合の教育効果の点で躊躇される場合もありました。ところが、実際にeラーニングを導入してみると、学術集会やセミナーに出席される先生方も減少せず、eラーニングの受講者も決して予想を下回ることはなかったいう結果も示されています。
― それはなぜですか?
DOFMET:学ぶべき絶対量が多いということだと思われます。学術集会やセミナーでは同時間帯にいくつも講演が行なわれますから、一つに出たらほかは出られません。つまり、学ぶ意欲があってもこれまでは思うように勉強ができないケースもありました。オンデマンドの配信システムやeラーニングなら同じ時間帯に行われている講演もあとでじっくり視聴できます。医療従事者の学習意欲は想像以上に大きなものですが、オンデマンド配信やeラーニングシステムは、対面形式の講演と相補的に機能させることができ、その学習意欲をバックアップするような仕組みであると言えるように思います。
― 『academia.study 』の主な特長を教えてください。
DOFMET:第一に、忙しい医療従事者の皆さんが履修しやすい仕組みであるという点です。具体的には、途中で視聴を中断してもまた続きから履修できる「レジューム機能」や、PC・スマホ・タブレットなど、どの端末でも同じユーザインタフェースで受講できる「レスポンシブデザイン」などです。例えば、病院内のパソコンで見ていた視聴を中断し、帰宅後スマホやタブレットで続きを見るという場合でもレジューム再生機能は有効です。医師や看護師など医療従事者は極めて忙しく、当直や診療の合間に履修を中断することはよくあります。ですから、どんな状況下でもストレスなく学習を継続できるという、機能的な仕組みだと考えています。こうした機能は最近ではごく一般的になってきましたが、academia.study =DOFMETシステムには開発当初からこうした機能を想定し装備していました。
もう一つは、履修履歴をきっちりと管理できるシステムです。例えばDVDやYouTube等のweb配信サービスを使った勉強の場合、履修が確実に完了しているかどうかは保証できません。専門医制度や認定医制度は国民の健康を守ることを目的とした資格認定制度ですから、単位認定の根拠となる履修を担保することがもっとも重要です。『academia.study 』は信頼性を高めるため、本人による確実な受講確認を行い、厳格な受講履修を管理しています。また、個々の受講履歴は学習者に修了証などで提供することもできますし、各学会でも適宜把握、評価に利用されています。
また、『academia.study 』には、所定の学習量に到達していない学習者を修了させない「早送り、スキップ制限」、理解度を図るとともに確実な受講を促す「理解度テスト」、履修証明としての活用が可能な「修了証発行システム」など様々な機能も標準搭載されています。もちろんセキュリティ対策も万全です。DOFMETは事業を実施する上で個⼈情報の保護が重要な事項であると認識しております。 DOFMETの事業すべての個⼈情報を適切に取扱うため個⼈情報保護⽅針を定めてます。
― システム導入の決め手
DOFMET:教育eラーニングの先駆的役割を果たしてきた点と、eラーニングを単なるビジネスではなく、国民の生活の中にどう役立てていくのかを目標にしている点だと思います。
『academia.study 』は医療領域を対象にしていますが、教育と医療は食料・水・エネルギー・通信・公共交通などの生活インフラと同様に国の根幹を為すものと言えます。本教育eラーニングシステムは、この点において国是にも共鳴するものと自負しております。
― ところで、近年の医療を取り巻く現状と課題についてはどのように捉えていますか。
DOFMET:ここですべての課題をあげることは難しいと思われます。ただ、その一例として、医療従事者の「復職への壁」をあげたいと思います。現在、資格を持ちながらも離・退職している潜在看護師が約17万人もいらっしゃいます。毎年約5万人の看護師が新しく有資格者として社会に出ますが、その3年分くらいの数の看護師さんが医療現場から離れてしまっています。薬剤師も同じくらいか、もっと多いと言われています。そこで問題となるのは、再復帰のための知識・技術のアップデイトです。ここを効率よく進ませる仕組みがないと、医療従事者が出産や育児等で現場から離れてしまうとなかなか復帰できないという状況が生まれてしまうことになります。
― 復職にあたり何が最大の障害となっているのでしょうか。
DOFMET:医学・医療の進歩は予想をはるかに超える勢いです。休職・離職している間の医学や医療技術の進歩についていけないという点が大きな障害のひとつになっているようです。大切なのは、就業場所の紹介ではなく、最新の医療現場でどういうことが行われているのかを復職したい方々がもっと容易にキャッチアップしていけるような仕組みを作ることです。しかし、残念ながら現状ではそれが十分にできておらず、他業種に流れてしまう有資格者も少なくありません。
新型コロナ禍で医師、看護師、薬剤師など医療従事者不足ということが現実のものとなっていますが、そうでなくてもじつは優秀な人材が市井に家庭に埋もれてしまっているのです。そういった方々を掘り起こし、現場に戻って活躍していただくことができれば、医療現場の働き方改革にも繫がり、医療の質の向上にもつながるでしょう。これは極めて重要なことだと考えています。
― そこにeラーニングを使えるのではないかと?
DOFMET:ぜひ提案したいと思っています。医療現場の「新しい知識と正しい知見」を提供できるeラーニング環境がすでにあるわけですから、必要な方々にお伝えするということをやってみたいと考えています。
― 医療分野におけるeラーニングの役割はまだまだ広がっていきそうですか?
DOFMET:毎日の生活を変えなくても、空いた時間に学ぶことができるという点で、eラーニングは非常に大きなパワー、可能性を秘めています。
繰り返しますが、震災に続く新型コロナ禍で医療現場はひっ迫しています。また、災害時に被災地へボランティアに行く人も増えています。たくさんの方々が、人のため社会のために働きたいという意思をお持ちです。そういう方々にもeラーニングがもっと役に立つのではないでしょうか。我々も微力ながらも、医療分野においてeラーニングを通じ、人のため社会のためとなる環境を提供し続けていきたいと思っています。
『academia.study 』は医療に携わる方々の独自学習や研鑽をサポートするための在宅視聴システムとして提供を開始しました。いままさに様々な学会で採用いただき、学術集会やセミナーの講演や処置・手術の手技などをいつでもどこでも動画で勉強できる仕組みが現実のものとなります。
本社団法人の『academia.study 』を利用したプログラムとして、すでに公開されている例を以下にあげてみますと、
- 日本癌治療学会「CANCER e-LEARNING がん医療専門チームスタッフのためのeラーニングプログラム=CAEL(カエル)」
医療従事者を対象にしたシステムで登録のみで費用負担なく学習ができ、製薬会社では会社の費用負担でMR教育に使用されています。
- 日本癌治療学会「認定がん医療ネットワークナビゲーター・シニアナビゲーターの育成」医療従事者以外も受講・申請可能です。「認定がん医療ネットワークナビゲーター・シニアナビゲーターの育成」開始時には『費用自己負担の学習でインセンティブのない資格取得する人はいない』との意見もありましたが、現在約1,000名弱の方が全国で活動しています。
関心をお持ちの方は日本癌治療学会のホームページを是非ともご覧下さい。